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2014年6月19日木曜日

福島大学で第7回公開講座が開催されました

8回目の公開講座がありました。
今回は、東京海洋大学准教授の濱田武士先生
(専門:水産経済・漁業経済)に「原発事故からの漁業復興」
と題してお話しをしていただきました。

















講義ダイジェスト------------------------------------------ 

    海洋汚染について
  海水のセシウム濃度は、原発事故直後は高かったものの、大量の
 海水により、薄まったため現在は極めて低い状態が続いている。

  水産物の放射性物質検査の結果は、平成26年の45月には
 100Bq/kgを超えるものは、福島県で全体の1.9%、福島県外では
 0.4%であった。
  放射性物質汚染の影響は、海産物の種類によって異なる。
 エビ・カニ類やタコ・イカでは、原発事故の初年度からほとんどセシ
 ウムは検出されていない。また、貝類からのセシウム検出量は減少し
 現在ではほとんど検出されることはない。
  一方、カレイやヒラメ、スズキなどでは、セシウムの量は減小しつつ
 あるが、現在でも100Bq/kgを超える量が検出されるケースがある。
  魚については、エサとして何を食べているか、および大きくなるまで
 の期間・年数に関係している。つまり、魚をえさとする魚や、何年もかけ
 て大きくなる魚では、セシウムが蓄積しやすい。

    福島県漁業の試験操業
  安全性を確認しながら、漁獲、取引、加工、流通販売をしている。
  試験操業を通じて再開可能なことをアピールしつつ、徐々に拡大して
 本格的な操業再開につなげることが目的。
  漁業者の組合である漁連が中心となって、放射性物質の検査、販売
 物の管理をしている。これまで、検査により安全性を確認しながら、魚種
 や海域、漁の方法などを徐々に拡大してきた。
  20146月現在では40種類の魚介類が対象である。

  しかし、漁獲高は震災以前の1割にも満たない量である。
 それは、ただでさえ自然に左右され不安定な漁業が、月数回しか漁に
 出られず、魚種も限定されているためである。そのため、流通・販売段階の
 市場やスーパー等の量販店にとっても取り扱いにくいものになってしまって
 いる。

  また、底引き網などの方法では、狙った魚だけを漁獲することは不可能で
 あり、出荷制限が解除された魚種以外は捨てている状況にある。
 これは生産者である漁師の生きがいを奪うようなものである。

  試験操業は文字通り「試験的」な段階であり、安全性を確保しながら、
 魚種の拡大をし、本格的な操業再開を目指す必要がある。

    汚染水漏洩問題による風評
  福島第一原発の汚染水漏洩問題が、試験操業に大きな影響を与えている。
 試験操業はこれまでの調査に基づき、安全な海域や魚種に限って行われ、
 検査をした上で流通しているが、汚染水漏洩が報道されるたびに風評による
 影響を受けた。漁業者の操業意欲の減退が問題となる。

  放射能汚染の風評被害対策もふくめ、食品の安心の確保には消費者と生産
 者の直接的なコミュニケーションがより活発になる必要があるのではないか。

   先生からの講義の後、会場から、現在の福島県での水産物の地産地消の
 状況について質問がありました。

  濱田先生からは、まだ、浜通りでの地産地消は極めて限定的であるという現状が
 紹介されました。その理由として、元々の海産物の流通経路が複雑であること、
 漁獲量が少なく不安定であることが挙げられ、生産・流通・小売りの各段階で課題を
 抱えているという回答をいただきました。




















 来週は福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの小松先生が講義されます。
 テーマは「福島県県北地域の農業経営と農業復興」です。

 どうぞお気軽にお越し下さい。





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